つけられまじい面魂でウムと坐っている。それも其筈で、いろいろの経緯《いきさつ》があった蒲生忠三郎を面前に扣《ひか》えているのであるから。又蒲生忠三郎氏郷も、何をと云わぬばかりの様子でスイと澄まして居る。これも其筈だ。氏郷は「錐《きり》、嚢《ふくろ》にたまらぬ風情の人」だと記されて居るから、これも随分恐ろしい人だ。厄介な人達の仲直りを利家は扱わせられたものだ。前田家の家臣の書いているところに拠ると、「其節御勝手衆も申候は、今日政宗の体《てい》、大納言殿御[#(ン)]屋にて無く候はば、まんをも仕《つかまつ》られ申すべく候、又飛騨守殿も少も/\左様の事|堪忍《かんにん》これなき仁にて、事も出来申候事も之有るべく候へども云々《うんぬん》」とある。まんとは我儘《わがまま》である。氏郷政宗二人の様子を饗応《きょうおう》掛りの者の眼から見たところを写して居るのである。そこで利家が見ると、政宗は肩衣《かたぎぬ》でいる、それは可《よ》い、脇指をさして居る、それも可いが、其の脇指が朱鞘《しゅざや》の大脇指も大脇指、長さが壱尺八九寸もあった。そんな長い脇指というものが有るもので無い。利家の眼は斯様《かよう》
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