》であるという秀吉の言には、重量《おもみ》が有って避けることが出来ぬ。是非が無いから、氏郷政宗を請待《しょうたい》して太閤《こう》の思わくを徹することにした。氏郷は承知した。政宗も太閤内意とあり、利家の扱いとあり、理の当然で押えられているのであるから戻《もど》くことは出来ぬ。然し主人の利家は氏郷と大の仲好しで、且又免れぬ中の縁者である、又左衛門が氏郷|贔屓《びいき》なのは知れきった事である。特《こと》に前年自分が氏郷を招いた前野の茶席の一件がある。如何に剛胆な政宗でも、コリャ迂闊《うかつ》には、と思ったことで有ろう。けれども我儘《わがまま》に出席をことわる訳にはならぬ、虚病も卑怯《ひきょう》である。是非が無い。有難き仕合、当日|罷出《まかりい》で、御芳情御礼申上ぐるでござろう、と挨拶せねばならなかった。余り御礼など申上度いことは無かったろう。然し流石は政宗である、シャ、何事も有らばあれ、と参会を約諾した。
 其日は来た。前田利家も可なり心遣いをしたことであろうが、これは又人物が大きい、ゆったりと肉つきの豊かなところが有って、そして実は中々骨太であり、諸大名の受けも宜くて徳川か前田かと思
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