る、此《この》間《かん》に於て監察御史《かんさつぎょし》韓郁《かんいく》(韓郁|或《あるい》は康郁《こういく》に作る)というもの時事を憂いて疏《そ》を上《たてまつ》りぬ。其の意、黄子澄斉泰を非として、残酷の豎儒《じゅじゅ》となし、諸王は太祖の遺体なり、孝康《こうこう》の手足《しゅそく》なりとなし、之《これ》を待つことの厚からずして、周王|湘《しょう》王|代《だい》王|斉《せい》王をして不幸ならしめたるは、朝廷の為《ため》に計る者の過《あやまち》にして、是れ則ち朝廷激して之を変ぜしめたるなりと為《な》し、諺《ことわざ》に曰《いわ》く、親者《しんしゃ》之を割《さ》けども断たず、疎者《そしゃ》之を続《つ》げども堅《かた》からずと、是《これ》殊《こと》に理有る也となし、燕の兵を挙ぐるに及びて、財を糜《び》し兵を損して而して功無きものは国に謀臣無きに近しとなし、願わくは斉王を釈《ゆる》し、湘王を封《ほう》じ、周王を京師《けいし》に還《かえ》し、諸王|世子《せいし》をして書を持し燕に勧め、干戈《かんか》を罷《や》め、親戚《しんせき》を敦《あつ》うしたまえ、然らずんば臣|愚《ぐ》おもえらく十年を待た
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