の人となりを知るべし。
 八月|耿炳文《こうへいぶん》等《ら》兵三十万を率いて真定《しんてい》に至り、徐凱《じょがい》は兵十万を率いて河間《かかん》に駐《とど》まる。炳文は老将にして、太祖創業の功臣なり。かつて張士誠《ちょうしせい》に当りて、長興《ちょうこう》を守ること十年、大小数十戦、戦って勝たざる無く、終《つい》に士誠をして志を逞《たくま》しくする能《あた》わざらしめしを以て、太祖の功臣を榜列《ほうれつ》するや、炳文を以て大将軍|徐達《じょたつ》に付《ふ》して一等となす。後又、北は塞《さい》を出でゝ元の遺族を破り、南は雲南《うんなん》を征して蛮を平らげ、或《あるい》は陝西《せんせい》に、或は蜀《しょく》に、旗幟《きし》の向う所、毎《つね》に功を成す。特《こと》に洪武《こうぶ》の末に至っては、元勲宿将多く凋落《ちょうらく》せるを以て、炳文は朝廷の重んずるところたり。今大兵を率いて北伐す、時に年六十五。樹《き》老いて材|愈《いよいよ》堅く、将老いて軍|益々《ますます》固し。然れども不幸にして先鋒《せんぽう》楊松、燕王の為《ため》に不意を襲われて雄県《ゆうけん》に死し、潘忠《はんちゅう》
前へ 次へ
全232ページ中84ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング