るも、亦《また》理に於て欠け、情に於て薄し。夫《そ》れ諸王を重封せるは、太祖の意に出づ。諸王未だ必ずしも反せざるに、先ず諸王を削奪せんとするの意を懐《いだ》いて諸王に臨むは、上《かみ》は太祖の意を壊《やぶ》り、下《しも》は宗室の親《しん》を破るなり。三年父の志を改めざるは、孝というべし。太祖崩じて、抔土《ほうど》未だ乾《かわ》かず、直《ただち》に其意を破り、諸王を削奪せんとするは、是《こ》れ理に於《おい》て欠け情に於て薄きものにあらずして何ぞや。斉黄の輩の為さんとするところ是《かく》の如くなれば、燕王等手を袖にし息を屏《しりぞ》くるも亦《また》削奪罪責を免《まぬ》かれざらんとす。太祖の血を承《う》けて、英雄傑特の気象あるもの、いずくんぞ俛首《べんしゅ》して寃《えん》に服するに忍びんや。瓜《うり》を投じて怒罵《どば》するの語、其中に機関ありと雖《いえど》も、又|尽《ことごと》く偽詐《ぎさ》のみならず、本《もと》より真情の人に逼《せま》るに足るものあるなり。畢竟《ひっきょう》両者|各《おのおの》理あり、各|非理《ひり》ありて、争鬩《そうげい》則《すなわ》ち起り、各|情《じょう》なく、各真情
前へ
次へ
全232ページ中77ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング