到す。燕王の勇卒|※[#「广+龍」、第3水準1−94−86]来興《ほうらいこう》、丁勝《ていしょう》の二人、彭二を殺しければ、其兵も亦《また》散じぬ。此《この》勢《いきおい》に乗ぜよやと、張玉、朱能等、いずれも塞北《さいほく》に転戦して元兵《げんぺい》と相《あい》馳駆《ちく》し、千軍万馬の間に老い来《きた》れる者なれば、兵を率いて夜に乗じて突いて出で、黎明《れいめい》に至るまでに九つの門の其八を奪い、たゞ一つ下らざりし西直門《せいちょくもん》をも、好言を以て守者を散ぜしめぬ。北平既に全く燕王の手に落ちしかば、都指揮使の余※[#「王+眞」、第4水準2−80−87]《よてん》は、走って居庸関《きょようかん》を守り、馬宣《ばせん》は東して薊州《けいしゅう》に走り、宋忠《そうちゅう》は開平《かいへい》より兵三万を率いて居庸関に至りしが、敢《あえ》て進まずして、退いて懐来《かいらい》を保ちたり。
煙は旺《さか》んにして火は遂に熾《も》えたり、剣《けん》は抜かれて血は既に流されたり。燕王は堂々として旗を進め馬を出しぬ。天子の正朔《せいさく》を奉ぜず、敢《あえ》て建文の年号を去って、洪武三十二年と
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