]貴《へいき》を擒《とりこ》にせんと。壬申《じんしん》の日、王、疾《やまい》癒《い》えぬと称し、東殿《とうでん》に出で、官僚の賀を受け、人をして※[#「日/丙」、第3水準1−85−16]と貴とを召さしむ。二人応ぜず。復《また》内官を遣《つかわ》して、逮《とら》わるべき者を交付するを装う。二人|乃《すなわ》ち至る。衛士甚だ衆《おお》かりしも、門者|呵《か》して之《これ》を止《とど》め、※[#「日/丙」、第3水準1−85−16]と貴とのみを入る。※[#「日/丙」、第3水準1−85−16]と貴との入るや、燕王は杖《つえ》を曳《ひ》いて坐《ざ》し、宴を賜い酒を行《や》り宝盤に瓜《うり》を盛って出《いだ》す。王曰く、たま/\新瓜《しんか》を進むる者あり、卿《けい》等《ら》と之を嘗《こころ》みんと。自ら一|瓜《か》を手にしけるが、忽《たちまち》にして色を作《な》して詈《ののし》って曰く、今世間の小民だに、兄弟宗族《けいていそうぞく》、尚《なお》相《あい》互《たがい》に恤《あわれ》ぶ、身は天子の親属たり、而《しか》も旦夕《たんせき》に其|命《めい》を安んずること無し、県官の我を待つこと此《かく》の如
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