る》くして、後日の計《けい》に便にせんまでの詐《いつわり》に過ぎず、本《もと》より恙無《つつがな》きのみ、と知らせたり。たま/\燕王の護衛百戸の※[#「登+おおざと」、第3水準1−92−80]庸《とうよう》というもの、闕《けつ》に詣《いた》り事を奏したりけるを、斉泰|請《こ》いて執《とら》えて鞠問《きくもん》しけるに、王が将《まさ》に兵を挙げんとするの状をば逐一に白《もう》したり。
 待設《まちもう》けたる斉泰は、たゞちに符を発し使《し》を遣わし、往《ゆ》いて燕府の官属を逮捕せしめ、密《ひそか》に謝貴《しゃき》張※[#「日/丙」、第3水準1−85−16]《ちょうへい》をして、燕府に在りて内応を約せる長史《ちょうし》葛誠《かつせい》、指揮《しき》盧振《ろしん》と気脈を通ぜしめ、北平|都指揮《としき》張信《ちょうしん》というものゝ、燕王の信任するところとなるを利し、密勅を下して、急に燕王を執《とら》えしむ。信《しん》は命を受けて憂懼《ゆうく》為《な》すところを知らず、情誼《じょうぎ》を思えば燕王に負《そむ》くに忍びず、勅命を重んずれば私恩を論ずる能《あた》わず、進退両難にして、行止《こうし
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