至りて燕山の護衛百戸|倪諒《げいりょう》というもの変を上《たてまつ》り、燕の官校于《かんこうう》諒周鐸《りょうしゅうたく》等《ら》の陰事を告げゝれば、二人は逮《とら》えられて京《けい》に至り、罪明らかにして誅《ちゅう》せられぬ。こゝに於て事《こと》燕王に及ばざる能わず、詔《みことのり》ありて燕王を責む。燕王|弁疏《べんそ》する能わざるところありけん、佯《いつわ》りて狂となり、号呼疾走して、市中の民家に酒食《しゅし》を奪い、乱語妄言、人を驚かして省みず、或《あるい》は土壌に臥《ふ》して、時を経《ふ》れど覚めず、全く常を失えるものゝ如《ごと》し。張※[#「日/丙」、第3水準1−85−16]《ちょうへい》謝貴《しゃき》の二人、入りて疾《やまい》を問うに、時まさに盛夏に属するに、王は爐《ろ》を囲み、身を顫《ふる》わせて、寒きこと甚《はななだ》しと曰《い》い、宮中をさえ杖《つえ》つきて行く。されば燕王まことに狂したりと謂《おも》う者もあり、朝廷も稍《やや》これを信ぜんとするに至りけるが、葛誠《かつせい》ひそかに※[#「日/丙」、第3水準1−85−16]と貴とに告げて、燕王の狂は、一時の急を緩《ゆ
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