国政に参す。諸王の入京会葬を遏《とど》めたる時の如き、諸王は皆|謂《おも》えらく、泰皇考《たいこうこう》の詔を矯《た》めて骨肉を間《へだ》つと。泰の諸王の憎むところとなれる、知るべし。
 諸王の為に私《ひそか》に謀る者を誰となす。曰く、諸王の雄《ゆう》を燕王となす。燕王の傅《ふ》に、僧|道衍《どうえん》あり。道衍は僧たりと雖《いえど》[#ルビの「いえど」は底本では「いえども」]も、灰心滅智《かいしんめっち》の羅漢《らかん》にあらずして、却《かえ》って是《こ》れ好謀善算の人なり。洪武二十八年、初めて諸王の封国に就《つ》く時、道衍|躬《み》ずから薦《すす》めて燕王の傅《ふ》とならんとし、謂《い》って曰く、大王《だいおう》臣をして侍するを得せしめたまわば、一白帽《いちはくぼう》を奉りて大王がために戴《いただ》かしめんと。王上《おうじょう》に白《はく》を冠すれば、其《その》文《ぶん》は皇なり、儲位《ちょい》明らかに定まりて、太祖未だ崩ぜざるの時だに、是《かく》の如《ごと》きの怪僧ありて、燕王が為に白帽を奉らんとし、而《しこう》して燕王|是《かく》の如きの怪僧を延《ひ》いて帷※[#「巾+莫」、U
前へ 次へ
全232ページ中48ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング