う無く、各※[#二の字点、1−2−22]《おのおの》其《その》封に於て哭臨《こくりん》して、他を責むるが如きこと無かるべきのみ。太祖の智にして事|此《ここ》に出《い》でず、詔を遺して諸王の情を屈するは解す可《べ》からず。人の情屈すれば則《すなわ》ち悦ばず、悦ばざれば則ち怨《うらみ》を懐《いだ》き他を責むるに至る。怨を懐き他を責むるに至れば、事無きを欲するも得べからず。太祖の人情に通ぜる何ぞ之《これ》を知るの明《めい》無からん。故に曰《いわ》く、太祖の遺詔に、諸王の入臨を止《とど》むる者は、太祖の為すところにあらず、疑うらくは斉泰|黄子澄《こうしちょう》の輩の仮託するところならんと。斉泰の輩、もとより諸王の帝に利あらざらんことを恐る、詔を矯《た》むるの事も、世其例に乏しからず、是《かく》の如きの事、未だ必ずしも無きを保《ほ》せず。然れども是《こ》れ推測の言のみ。真《しん》耶《か》、偽《ぎ》耶《か》、太祖の失か、失にあらざるか、斉泰の為《い》か、為にあらざる耶《か》、将又《はたまた》斉泰、遺詔に托して諸王の入京会葬を遏《とど》めざる能《あた》わざるの勢の存せしか、非|耶《か》。建文永楽の間
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