《ていし》となる。濂時に年六十八、孝孺を得て大《おおい》に之を喜ぶ。潜渓が方生の天台に還《かえ》るを送るの詩の序に記して曰く、晩に天台の方生|希直《きちょく》を得たり、其の人となりや凝重《ぎょうちょう》にして物に遷《うつ》らず、穎鋭《えいえい》にして以て諸《これ》を理に燭《しょく》す、間《まま》発《はっ》[#「間《まま》発《はっ》」は底本では「発《まま》間《はっ》」]して文を為《な》す、水の湧《わ》いて山の出《い》づるが如し、喧啾《けんしゅう》たる百鳥の中《うち》、此の孤鳳皇《こほうおう》を見る、いかんぞ喜びざらんと。凝重《ぎょうちょう》穎鋭《えいえい》の二句、老先生|眼裏《がんり》の好学生を写し出《いだ》し来《きた》って神《しん》有り。此の孤鳳皇《こほうおう》を見るというに至っては、推重《すいちょう》も亦《また》至れり。詩十四章、其二に曰く、

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念《おも》ふ 子《し》が 初めて来りし時、
才思 繭糸《けんし》の若《ごと》し。
之を抽《ひ》いて 已《すで》に緒《いとぐち》を見る、
染めて就《な》せ 五色《ごしき》の衣《い》。
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其九に曰
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