84]《げんれい》の操履《そうり》、燕王の剛邁《ごうまい》の気象、二者|相《あい》遇《あ》わば、氷塊の鉄塊と相《あい》撃《う》ち、鷲王《しゅうおう》と龍王《りゅうおう》との相《あい》闘《たたか》うが如き凄惨狠毒《せいさんこんどく》の光景を生ぜんことを想察して預《あらかじ》め之を防遏《ぼうあつ》せんとせるか、今皆確知する能《あた》わざるなり。
 方孝孺は如何《いか》なる人ぞや。孝孺|字《あざな》は希直《きちょく》、一字は希古《きこ》、寧海《ねいかい》の人。父|克勤《こくきん》は済寧《せいねい》の知府《ちふ》たり。治を為すに徳を本《もと》とし、心を苦《くるし》めて民の為《ため》にす。田野《でんや》を闢《ひら》き、学校を興し、勤倹身を持し、敦厚《とんこう》人を待つ。かつて盛夏に当って済寧の守将、民を督して城を築かしむ。克勤曰く、民今|耕耘《こううん》暇《いとま》あらず、何ぞ又|畚※[#「金+插のつくり」、第3水準1−93−28]《ほんそう》に堪えんと。中書省《ちゅしょしょう》に請いて役《えき》を罷《や》むるを得たり。是より先《さ》き久しく旱《ひでり》せしが、役の罷むに及んで甘雨《かんう》大《
前へ 次へ
全232ページ中165ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング