《こ》れ皆文を好むの余《よ》に出で、道余録《どうよろく》を著し、浄土簡要録《じょうどかんようろく》を著し、諸上善人詠《しょじょうぜんじんえい》を著せるは、是れ皆道の為にせるに出《い》づ。史に記す。道衍|晩《ばん》に道余録を著し、頗《すこぶ》る先儒を毀《そし》る、識者これを鄙《いや》しむ。其《そ》の故郷の長州《ちょうしゅう》に至るや、同産の姉を候《こう》す、姉|納《い》れず。其《その》友|王賓《おうひん》を訪《と》う、賓も亦《また》見《まみ》えず、但《ただ》遙《はるか》に語って曰く、和尚《おしょう》誤れり、和尚誤れりと。復《また》往《ゆ》いて姉を見る、姉これを詈《ののし》る。道衍|惘然《ぼうぜん》たりと。道衍の姉、儒を奉じ仏《ぶつ》を斥《しりぞ》くるか、何ぞ婦女の見識に似ざるや。王賓は史に伝《でん》無しと雖も、おもうに道衍が詩を寄せしところの王達善《おうたつぜん》ならんか。声を揚げて遙語《ようご》す、鄙《いや》しむも亦|甚《はなはだ》し。今道余録を読むに、姉と友との道衍を薄んじて之《これ》を悪《にく》むも、亦《また》過ぎたりというべし。道余録自序に曰く、余|曩《さき》に僧たりし時、元季《
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