糾々《きゅうきゅう》、昂々《こうこう》として、屈す可《べ》からず、撓《たわ》む可からず、消《しょう》す可からず、抑《おさ》う可からざる者、燕王に遇《あ》うに当って、※[#「(ぼう+彡)/石」、第4水準2−82−32]然《かくぜん》として破裂し、爆然として迸発《へいはつ》せるものというべき耶《か》、非《ひ》耶《か》。予|其《そ》の逃虚子集《とうきょししゅう》を読むに、道衍が英雄豪傑の蹟《あと》に感慨するもの多くして、仏灯《ぶっとう》梵鐘《ぼんしょう》の間に幽潜するの情の少《すくな》きを思わずんばあらざるなり。
 道衍の人となりの古怪なる、実に一|沙門《しゃもん》を以て目す可からずと雖も、而《しか》も文を好み道の為にするの情も、亦《また》偽《ぎ》なりとなす可からず。此《この》故《ゆえ》に太祖《たいそ》[#「太祖」は底本では「大祖」]実録《じつろく》を重修《ちょうしゅう》するや、衍《えん》実に其《その》監修を為《な》し、又|支那《しな》ありてより以来の大編纂《だいへんさん》たる永楽大典《えいらくだいてん》の成れるも、衍実に解縉《かいしん》等《ら》と与《とも》に之《これ》を為《な》せるにて、是
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