《のぼ》れば、
親藩 待つこと惟《これ》久しかりき。
天地 忽《たちま》ち 大変して、
神龍 氷湫《ひょうしゅう》より起る。
万方 共に忻《よろこ》び躍《おど》りて、
率土《そっと》 元后《げんこう》を戴《いただ》く。
吾《われ》を召して 南京《なんけい》に来らしめ、
爵賞加恩 厚し。
常時 天眷《てんけん》を荷《にな》ふ、
愛に因《よ》って 醜《しゅう》を知らず。(下略)
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嘯詠寒山《しょうえいかんざん》に擬すの句は、此《この》老《ろう》の行為に照《てら》せば、矯飾《きょうしょく》の言に近きを覚ゆれども、若《もし》夫《そ》れ知己に遇《あ》わずんば、強項《きょうこう》の人、或《あるい》は呉山《ござん》に老朽を甘《あま》んじて、一生|世外《せいがい》の衲子《とっし》たりしも、また知るべからず、未《いま》だ遽《にわか》に虚高《きょこう》の辞を為《な》すものと断ず可《べ》からず。たゞ道衍の性の豪雄なる、嘯詠吟哦《しょうえいぎんが》、或《あるい》は獅子《しし》の繍毬《しゅうきゅう》を弄《ろう》して日を消するが如《ごと》くに、其《その》身を終ることは之《これ》有るべし
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