なり。
大業 計《はかりごと》 已《すで》に成りて、
勲名 簡牘《かんとく》に照る。
身|退《しりぞ》いて 即《すなわ》ち長往し、
川流れて 去つて復《かえ》ること無し。
住城《じゅうじょう》 百年の後《のち》、
鬱々《うつうつ》たり 盧溝《ろこう》の北。
松《まつ》楸《ひさぎ》 烟靄《えんあい》 青く、
翁仲《いしのまもりびと》 ※[#「くさかんむり/靡」、第4水準2−87−21]蕪《かおりぐさ》 緑なり。
強梁《あばれもの》も 敢《あえ》て犯さず、
何人《なんぴと》か 敢て樵《きこり》牧《うまかい》せん。
王侯の 墓|累々《るいるい》たるも、
廃《はい》すること 草宿《わずかのま》をも待たず。
惟《ただ》公《こう》 民望《みんぼう》に在《あ》り、
天地と 傾覆《けいふく》を同じうす。
斯《この》人《ひと》 作《おこ》す可《べ》からず、
再拝して 還《また》一|哭《こく》す。
[#ここで字下げ終わり]

 蔵春は秉忠《へいちゅう》の号なり。盧溝は燕の城南に在り。此《この》詩《し》劉文貞に傾倒すること甚《はなは》だ明らかに、其の高風大業を挙げ、而《しこう》して再拝|一哭《いっこく》すと
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