、刀《とう》を持てる者を殺して脱帰し、直《ただち》に衆を導いて城を陥《おと》しゝことあり。勇力察す可《べ》し。後《のち》戦功を以《も》って累進して将となり、蜀《しょく》を征し、雲南《うんなん》を征し、諸蛮《しょばん》を平らげ、雄名世に布《し》く。建文元年|耿炳文《こうへいぶん》に従いて燕と戦う。炳文敗れて、成|執《とら》えらる。燕王自ら其《その》縛を解いて曰く、皇考の霊、汝《なんじ》を以《もっ》て我に授くるなりと。因《よ》って兵を挙ぐるの故を語る。成感激して心を帰《き》し、遂《つい》に世子を輔《たす》けて北平を守る。然《しか》れども多く謀画《ぼうかく》を致すのみにして、終《つい》に兵に将として戦うを肯《がえ》んぜす、兵器を賜《たま》うも亦《また》受けず。蓋《けだ》し中年以後、書を読んで得るあるに因《よ》る。又一種の人なり。後《のち》、太子|高熾《こうし》の羣小《ぐんしょう》の為《ため》に苦《くるし》めらるるや、告げて曰く、殿下は但《ただ》当《まさ》に誠を竭《つく》して孝敬《こうけい》に、孳々《しし》として民を恤《めぐ》みたもうべきのみ、万事は天に在り、小人は意を措《お》くに足らずと。識
前へ
次へ
全232ページ中115ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング