入る。燕王十余騎を以て庸の営に逼《せま》って野宿《やしゅく》す。天|明《あ》く、四面皆敵なり。王|従容《しょうよう》として去る。庸の諸将|相《あい》顧《かえり》みて愕《おどろ》き※[#「目+台」、第3水準1−88−79]《み》るも、天子の詔、朕をして叔父《しゅくふ》を殺すの名を負わしむる勿《なか》れの語あるを以て、矢を発《はな》つを敢《あえ》てせず。此《この》日《ひ》復《また》戦う。辰《たつ》より未《ひつじ》に至って、両軍|互《たがい》に勝ち互に負く。忽《たちまち》にして東北風|大《おおい》に起り、砂礫《されき》面《おもて》を撃つ。南軍は風に逆《さから》い、北軍は風に乗ず。燕軍|吶喊《とっかん》鉦鼓《しょうこ》の声地を振《ふる》い、庸の軍当る能《あた》わずして大《おおい》に敗れ走る。燕王戦|罷《や》んで営に還《かえ》るに、塵土《じんど》満面、諸将も識《し》る能わず、語声を聞いて王なるを覚《さと》りしという。王の黄埃《こうあい》天に漲《みなぎ》るの中に在《あ》って馳駆奔突《ちくほんとつ》して叱※[#「口+它」、第3水準1−14−88]《しった》号令せしの状、察す可《べ》きなり。
呉傑《
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