《かち》に乗じ、残獲万余人、燕軍|大《おおい》に敗れて奔《はし》る。庸兵を縦《はな》って之を追い、殺傷甚だ多し。此《この》役《えき》や、燕王|数々《しばしば》危《あやう》し、諸将帝の詔《みことのり》を奉ずるを以て、刃《じん》を加えず。燕王も亦|之《これ》を知る。王騎射|尤《もっと》も精《くわ》し、追う者王を斬《き》るを敢《あえ》てせずして、王の射て殺すところとなる多し。適々《たまたま》高煦《こうこう》、華衆《かしゅう》等を率いて至り、追兵を撃退して去る。
燕王張玉の死を聞きて痛哭《つうこく》し、諸将と語るごとに、東昌《とうしょう》の事に及べば、曰く、張玉を失うより、吾《われ》今に至って寝食安からずと。涕《なみだ》下りて已《や》まず。諸将も皆泣く。後《のち》功臣を賞するに及びて、張玉を第一とし、河間《かかん》王を追封《ついほう》す。
初め燕王《えんおう》の師の出《い》づるや、道衍《どうえん》曰《いわ》く、師は行《ゆ》いて必ず克《か》たん、たゞ両日を費《ついや》すのみと。東昌《とうしょう》より還《かえ》るに及びて、王多く精鋭を失い、張玉《ちょうぎょく》を亡《うしな》うを以《もっ》て
前へ
次へ
全232ページ中110ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
幸田 露伴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング