と麁食とを撰《えら》ばず、纔《わずか》に身をば支ふれば足れりといふにぞ、便《すなわ》ち稗の※[#「麥にょう+少」、第4水準2−94−55]を布施しけるに、僧は稗の※[#「麥にょう+少」、第4水準2−94−55]を食し訖《おわ》りて去《さり》たりける。
その後《のち》阿利※[#「咤−宀」、第3水準1−14−85]は薪を取らんと山に行きしが、道にて一匹の兎《うさぎ》を見ければ杖《つえ》ふり上げて丁《ちょう》と撩《う》ちしに、忽《たちま》ち兎は死人と変じて阿利※[#「咤−宀」、第3水準1−14−85]の項《うなじ》に搦《から》み着きたり。これはと大きに驚き呆《あき》れて、推《お》し剥《は》がさんと力を出《いだ》せど少しも離るることなければ、人を頼みて挽却《ひきさ》らしめしも一向さらにその甲斐《かい》なし。是非なく夜《よ》に紛れて我家《わがや》に帰れば、こはまた不思議や、死人の両手は自然に解けて体《たい》は地に堕《お》ち、見る見る灼々《しゃくしゃく》たる光輝を発して無垢《むく》の黄金像となりけり。阿利※[#「咤−宀」、第3水準1−14−85]は大きに驚きながらその像の頭《こうべ》を截《き》り
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