かく》すところに印《しるし》をつけ置き、さて象の代りに石を積みて先の印のところまで船の水に没るるを見計らひ、一々石の量目《めかた》を量り集めなば即《すなわ》ち象の斤両を得べしと教へられ、道理《もっとも》なりと合点《がてん》してこの智《ち》をもつて天神に答へける。よしよし、さらばまた問はむ、一掬《いっきく》の水の大海より多きことあり、この理を知るや、と天神の例の如くに難問を下すに、例のごとく王らはまた答へを為《な》し得で困りけれど、彼大臣は例のごとく老父の教《おしえ》を得て、その語は極めて解きやすし、もし人ありて慈悲心をもて父母《ちちはは》乃至《ないし》世の病人なんどに水を施さば、仮令《たとい》その量《かさ》少くして僅《わずか》に掌《てのひら》に掬《むす》びたるほどなりとも、その功徳《くどく》広大無辺にして大海といへども比ぶるに足らじといひければ、この度は天神忽ち身を変じて、眉《まゆ》うつくしく色あざやかに、玉とも花ともいふべきまで※[#「女+交」、第4水準2−5−49]麗《かおよ》き女と化けながら、世間に我ほど端厳《うつくし》きものあるべきやと尋ねたり。
王らは例の如く答なかりしが大
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