りなり。国の大事ぞ、等閑《なおざり》になせそ、もし何者にもあれ天神の難問を能《よ》く解き開き得ば厚く賞与をすべきなりと、一国内に洽《あまね》く知らしめて答弁《こたえ》を募るに応ずるものも更になし。彼の大臣は家に帰りて、もし我が父の知ることもやと例の密室に至りてこの由《よし》を述べけるに、そは難渋《むつかし》きことにあらず、軟※[#「而/大」、第4水準2−85−5]《やわらか》にして細《こまか》きものを蛇に近づけてその躁《さわ》ぐを雄と知り、静かなるを雌と知るべしと教へければ、大臣は急に王宮に行きてこの旨をいひ出で、試しみるに果してその言の如く、雄雌紛るるかたもあらず。王は悦《よろこ》びて天神に対《むか》ひ、これは雌にしてこれは雄なりと答ふるにその答誤りなければ、天神はまた一大白象を現《あらわ》して、この象の重さ幾斤両ぞ、答へ得ずんば国を覆《くつがえ》さん、と難題を出《いだ》しぬ。
王も諸臣も、如何《いか》にして秤皿《はかりざら》にも載せがたきこの大象の重さを知り得んと答へ迷《まど》ひけるが、彼《かの》大臣はまた父に問ひ尋ぬるに、そは易《やす》きことなり、象をば船に打乗せて水の船を没《
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