るような浅薄ナ論じゃアない。ダガネ、論をする前に君に教えておく事があるのサ。いいかえ、臆えて置玉え、妙な理屈だゼ。マアこうサ。第一、人間というものは愚なものだ、という事は承知するだろう。その愚なものに好《よし》と思われる論は愚論サ。僕の論は平常《なみ》の人にはきっと悪くいわれるよ。ダカラ愚論でないのサ。愚論でないから分らないのサ。人間に分るような浅薄の議論は仕方がないのサ。人間に分らないくらい高尚幽玄の論だから気を静めて聞玉えよ。よしカネ、まず我輩が宇宙を貫ぬく大真理を発見した履歴を話そうよ。僕がネ幼少の時にフト感じた事があるのサ。実にネ、大発明というものはつまらない所から起るもので、僕の大真理は道から出たのサ。僕が田舎に居て小学校へ通う時分にネ、草の茂ッた広い野を一ツ越して行くのサ。毎日毎日通学するのだがネ。爰《ここ》に或《ある》朝偶然大真理を発見する種になる事に出逢ッたのサ。ちょうど或朝少し後れて家を出たが、時間が例《いつも》より後れたから駈出したのサ。所が何も障害物のない広い野だのに、道が真直についていないのサ。道が真直についていれば早く到着するのだのにサ。君も知ているだろう、二
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