ねじくり博士
幸田露伴

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)大悟《たいご》したる

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)六十四|卦《け》だけ

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「諂のつくり+炎」、第3水準1−87−64]
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当世の大博士にねじくり先生というがあり。中々の豪傑、古今東西の書を読みつくして大悟《たいご》したる大哲学者と皆人恐れ入りて閉口せり。一日某新聞社員と名刺に肩書のある男尋ね来り、室に入りて挨拶するや否《いな》、早速、先生の御高説をちと伺いたし、と新聞屋の悪い癖で無暗《むやみ》に「人を食物《くいもの》にする」会話を仕出す。ところが大哲学者もとより御人好《おひとよし》の質《たち》なれば得意になッて鼻をクンクンいわせながら饒舌《しゃべ》り出す。どうも凡人は困りますよ、社会を直線ずくめに仕たがるのには困るよ。チト宇宙の真理を見ればよいのサ。政事家は政事家で、自己の議論を実行して世界を画一のものにしようなんという馬鹿気《
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