て互に撞着《ぶつかる》時よりおもしろくない。直線は一種直線ぎりだが、曲線はいろいろの度を無窮の多数に有している、有則曲線、無則曲線、実に人間には分らないほど色々の曲線がある。たとえば有則の曲線の場合でいおうか。ここに仮定した二点があるとして、二点を貫く曲線をブンマワシで書て見玉え、またそのブンマワシの心を動かして同くその二点を貫く曲線を書て見玉え、又そのブンマワシの心を動かして書て見玉え、有則の曲線が無数に書けるよ、実にその相互に異ったる状態を有せる曲線の即ち弧という奴の数は何箇《いくつ》あるか知れない。まして人間の指で書くような出鱈目《でたらめ》の曲線は何千万状あるか知れるものではない。このくらい曲線という奴は洒落た奴だよ。だから二力が互に異りたる曲線的に来てぶつかる時は、又何千万様の変化を起すか知れないのサ。ここが即ちおもしろい所だ。ここから天地万物がメチャメチャに色々の形状をなしてあらわれて来るのだよ。さてその曲線という奴は無障碍の空間で試みに引のばして見玉え、必ず螺線となるには相違ないのサ。螺線にならなければ環をなすのだよ、環をなしてはつまらないのサ。去年の道をまた今年もあるい
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