鷭狩
泉鏡花
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)初冬《はつふゆ》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)半月館|弓野屋《ゆんのや》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「彳+尚」、第3水準1−84−33]
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一
初冬《はつふゆ》の夜更《よふけ》である。
片山津《かたやまづ》(加賀)の温泉宿、半月館|弓野屋《ゆんのや》の二階――だけれど、広い階子段《はしごだん》が途中で一段大きく蜿《うね》ってS形に昇るので三階ぐらいに高い――取着《とッつき》の扉《ドア》を開けて、一人旅の、三十ばかりの客が、寝衣《ねまき》で薄ぼんやりと顕《あらわ》れた。
この、半ば西洋づくりの構《かまえ》は、日本間が二室《ふたま》で、四角な縁が、名にしおうここの名所、三湖の雄なる柴山潟《しばやまがた》を見晴しの露台の誂《あつらえ》ゆえ、硝子戸《がらすど》と二重を隔ててはいるけれど、霜置く月の冷たさが、渺々《びょうびょう》たる水面から、自《
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