たり》を通魔《とおりま》がしたのであろう。
 北へも響いて、町尽《まちはずれ》の方へワッと抜けた。
 時に片頬笑《かたほえ》みさえ、口許《くちもと》に莞爾《にっこり》ともしない艶《えん》なのが、露店を守って一人居た。
 縦通《たてどおり》から横通りへ、電車の交叉点《こうさてん》を、その町尽れの方へ下《さが》ると、人も店も、灯《ひ》の影も薄く歯の抜けたような、間々を冷い風が渡る癖に、店を一ツ一ツ一重《ひとえ》ながら、茫《ぼう》と渦を巻いたような霧で包む。同じ燻《くす》ぶった洋燈《ランプ》も、人の目鼻立ち、眉も、青、赤、鼠色の地《じ》の敷物ながら、さながら鶏卵《たまご》の裡《うち》のように、渾沌《こんとん》として、ふうわり街燈の薄い影に映る。が、枯れた柳の細い枝は、幹に行燈《あんどう》を点《つ》けられたより、かえってこの中に、処々すっきりと、星に蒼《あお》く、風に白い。
 その根に、茣蓙《ござ》を一枚の店に坐ったのが、件《くだん》の婦《おんな》で。
 年紀《とし》は六七……三十にまず近い。姿も顔も窶《やつ》れたから、ちと老けて見えるのであろうも知れぬ。綿らしいが、銘仙縞《めいせんじま》の羽
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