た行燈《あんどん》をくるりと廻す。綱が禁札、ト捧げた体《てい》で、芳原被《よしわらかぶ》りの若いもの。別に絣《かすり》の羽織を着たのが、板本を抱えて彳《たたず》む。
「諸人に好かれる法、嫌われぬ法も一所ですな、愛嬌のお守《まもり》という条目。無銭で米の買える法、火なくして暖まる法、飲まずに酔う法、歩行《ある》かずに道中する法、天に昇る法、色を白くする法、婦《おんな》の惚《ほ》れる法。」
四
「お痛《いて》え、痛え、」
尾を撮《つま》んで、にょろりと引立《ひった》てると、青黒い背筋が畝《うね》って、びくりと鎌首を擡《もた》げる発奮《はずみ》に、手術服という白いのを被《はお》ったのが、手を振って、飛上る。
「ええ驚いた、蛇が啖《くら》い着くです――だが、諸君、こんなことでは無い。……この木製の蛇が、僕の手練に依って、不可思議なる種々の運動を起すです。急がない人は立って見て行《ゆ》きたまえよ、奇々妙々感心というのだから。
だが、諸君、だがね、僕は手品師では無いのだよ。蛇使いではないのですが、こんな処じゃ、誰も衛生という事を心得ん。生命《いのち》が大切という事を弁別《わき
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