どんな》危《あぶな》い恐《こは》い目《め》に出會《であ》ひましても、安心《あんしん》でございます。それに私《わたくし》が危《あやふ》ければ、此《こ》の弟《おとうと》が助《たす》けてくれます、私《わたくし》もまた弟《おとうと》一人《ひとり》は殺《ころ》しません。其《それ》で二人《ふたり》とも大丈夫《だいぢやうぶ》と思《おも》ひますから。少《すこ》しも恐《こは》くはござらぬ。」と恁《か》う云《い》ふぢや。私《わし》にはこれまで讀《よ》んだ御經《おきやう》より、餘程《よつぽど》難有《ありがた》くて涙《なみだ》が出《で》た。まことに善知識《ぜんちしき》、そのお庇《かげ》で大《おほ》きに悟《さと》りました。
乘合《のりあひ》の衆《しう》も何《なに》がなしに、自分《じぶん》で自分《じぶん》を信仰《しんかう》なさい。船《ふね》が大丈夫《だいぢやうぶ》と信《しん》じたら乘《の》つて出《で》る、出《で》た上《うへ》では甚※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《どんな》颶風《はやて》が來《こ》ようが、船《ふね》が沈《しづ》まうが、體《からだ》が溺《おぼ》れようが、
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