》って、白き象《ぞう》の大《おおい》なる頭《かしら》の如き頂《いただき》へ、雲に入《い》るよう衝《つ》と立った時、一度その鮮明《あざやか》な眉《まゆ》が見えたが、月に風なき野となんぬ。
 高坂は※[#「てへん+堂」、第4水準2−13−41]《どう》と坐した。
 かくて胸なる紅《くれない》の一輪を栞《しおり》に、傍《かたわら》の芍薬《しゃくやく》の花、方《ほう》一尺なるに経《きょう》を据《す》えて、合掌《がっしょう》して、薬王品《やくおうほん》を夜もすがら。



底本:「鏡花短篇集」岩波文庫、岩波書店
   1987(昭和62)年9月16日第1刷発行
底本の親本:「鏡花全集 第七卷」岩波書店
   1942(昭和17)年7月初版発行
初出:「二六新報」
   1903年(明治36年)5月16〜30日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2001年12月22日公開
2005年12月1日修正
青空文庫作成ファイル:
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