《こほ》るばかり寒《さむ》くなつた。
あかりのついた、お附合《つきあひ》の隣《となり》の窓《まど》から、岩《いは》さんの安否《あんぴ》を聞《き》かうとしでもしたのであらう。格子《かうし》をあけた婦《をんな》があつたが、何《なん》にも女房《にようばう》には聞《きこ》えない。……
肩《かた》を固《かた》く、足《あし》がふるへて、その左側《ひだりがは》の家《うち》の水口《みづくち》へ。……
……行《ゆ》くと、腰障子《こししやうじ》の、すぐ中《なか》で、ばちや/\、ばちやり、ばちや/\と音《おと》がする。……
手《て》もしびれたか、きゆつと軋《きし》む……水口《みづくち》を開《あ》けると、茶《ちや》の間《ま》も、框《かまち》も、だゞつ廣《ぴろ》く大《おほ》きな穴《あな》を四角《しかく》に並《なら》べて陰氣《いんき》である。引窓《ひきまど》に射《さ》す、何《なん》の影《かげ》か、薄《うす》あかりに一目《ひとめ》見《み》ると、唇《くちびる》がひツつツた。……何《ど》うして小兒《こども》の手《て》で、と疑《うたが》ふばかり、大《おほ》きな澤庵石《たくあんいし》が手桶《てをけ》の上《うへ》に、
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