は過されぬ。立ちましょう、立ちましょう。
管八 言うことを肯《き》かんと縛《くく》り上げるぞ。
嘉伝次 村、郡《こおり》のためじゃ、是非がない。これ、はい、気の毒なものじゃわい。
管八 お神官《かんぬし》、こりゃいかんでえ?
宅膳 引立《ひった》てて可《よ》うござる。
管八 来い、それ。
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と村のもの取込むる。百合|遁《に》げ迷う。
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風呂助 埒《らち》あかんのう。私《わし》にまかせたが可うござんす。
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とのさばり掛《かか》り、手もなく抱《だき》すくめて掴《つか》み行く。仕丁《しちょう》手伝い、牛の背に仰《あおむ》けざまに置く。
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百合 ああれ。(と悶《もだ》ゆる。)
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胴にまわし、ぐるぐると縄を捲《ま》く。お百合|背《せな》を捻《ね》じて面《おもて》を伏す。黒髪|颯《さっ》と乱れて長く牛の鰭爪《ひづめ》に落つ。
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