。金《かね》が光る――光るてえば、鱗てえば、ここな、(と小屋を見て)鐘撞《かねつき》先生が打《ぶ》ってしめた、神官《かんぬし》様の嬢様さあ、お宮の住居《すまい》にござった時分は、背中に八枚鱗が生えた蛇体だと云っけえな。……そんではい、夜さり、夜ばいものが、寝床を覗《のぞ》くと、いつでもへい、白蛇《しろへび》の長《なげ》いのが、嬢様のめぐり廻って、のたくるちッて、現に、はい、目のくり球廻らかいて火を吹いた奴《やつ》さえあっけえ。……
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鐘撞先生には何事もねえと見えるだ。まんだ、丈夫に活《い》きてござって、執殺《とりころ》されもさっしゃらねえ。見ろやい、取っても着けねえ処に、銀の鱗さ、ぴかぴかと月に光るちッて、汝《われ》がを、(と鯉をじろじろ)ばけものか蛇体と想うて、手を出さずば、うまい酒にもありつけぬ処だったちゅうものだ。――嬢様が手本だよ。はってな、今時分、真暗《まっくら》だ。舐殺《なめころ》されはしねえだかん、待ちろ。(と抜足で寄って、小屋の戸の隙間《すきま》を覗く。)
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蟹五郎《かにごろう》。朱顔、蓬《おどろ》なる赤毛頭《あかげがしら》、
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