ら……馬鹿、嬰児《ねんねえ》だな。
学円 何かい、ちょっと出懸《でがけ》に、キスなどせんでも可《い》いかい。
晃 旦那方じゃあるまいし、鐘撞《かねつき》弥太兵衛でがんすての。
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と両人連立ち行く。
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百合 (熟《じっ》としばし)まさかと思うけれど、ねえ、坊や、大丈夫お帰んなさるわねえ。おおおお目ン目を瞑《ねむ》って、頷《うなず》いて、まあ、可愛い。(と頬摺《ほおず》りし)坊やは、お乳《つぱ》をおあがりよ。母《かあ》さんは一人でお夕飯も欲しくない。早く片附けてお留守をしましょう。一人だと見て取ると、村の人が煩《うるさ》いから、月は可《よ》し、灯を消して戸をしめて。――
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と框《かまち》にずッと雨戸を閉める。閉め果てると、戸の鍵《かぎ》がガチリと下りる。やがて、納戸の燈《ともしび》、はっと消ゆ。
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※[#歌記号、1−3−28]出る化ものの数々は、一ツ目、見越《みこし》、河太郎、獺《かわうそ》に、海坊主、天守にお
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