と、お孝《かう》は堪《たま》らなかつた。
彌次馬《やじうま》なんざ、こんな不景氣《ふけいき》な、張合《はりあひ》のない處《ところ》には寄着《よりつき》はしないので、むらがつてるものの多《おほ》くは皆《みな》このあたりの廣場《ひろば》でもつて、びしよ/\雨《あめ》だから凧《たこ》を引摺《ひきず》つてた小兒等《こどもら》で。泣《な》くのがおもしろいから「やい、泣《な》いてらい!」なんて、景氣《けいき》のいゝことをいつて見物《けんぶつ》して居《ゐ》る。
子守《こもり》がまた澤山《たくさん》寄《よ》つて居《ゐ》た。其中《そのなか》に年嵩《としかさ》な、上品《じやうひん》なのがお守《もり》をして六《むつ》つばかりの女《むすめ》の兒《こ》が着附《きつけ》萬端《ばんたん》姫樣《ひいさま》といはれる格《かく》で一人《ひとり》居《ゐ》た。その飼犬《かひいぬ》ではないらしいが、毛色《けいろ》の好《い》い、耳《みゝ》の垂《た》れた、すらつとしたのが、のつそり、うしろについてたが、皆《みんな》で、がや/\いつて、迷兒《まひご》にかゝりあつて、うつかりしてる隙《ひま》に、房《ふつ》さりと結《むす》んでさげた
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