とば》を知《し》らぬ身《み》も、戀《こひ》には女《をんな》賢《さかし》うして、袖《そで》に袂《たもと》に蔽《おほ》ひしが、月日《つきひ》經《た》つまゝ、鶴《つる》はさすがに年《とし》の功《こう》、己《おの》が頭《かしら》の色《いろ》や添《そ》ふ、女《むすめ》の乳《ちゝ》の色《いろ》づきけるに、總毛《そうげ》を振《ふる》つて仰天《ぎやうてん》し、遍《あまね》く木《こ》の葉《は》を掻搜《かきさが》して、男《をとこ》の裾《すそ》を見出《みだ》ししかば、ものをも言《い》はず一嘴《ひとくちばし》、引咬《ひつくは》へて撥《は》ね飛《と》ばせば、美少年《びせうねん》はもんどり打《う》つて、天上《てんじやう》に舞上《まひあが》り、雲雀《ひばり》の姿《すがた》もなかりしとぞ。
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外面女菩薩《げめんによぼさつ》――内心如夜叉《ないしんによやしや》
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心得《こゝろえ》たか、と語《かた》らせ給《たま》へば、羅漢《らかん》の末席《まつせき》に侍《さぶら》ひて、悟顏《さとりがほ》の周梨槃特《しゆりはんどく》、好《この》もしげなる目色《めつき》にて、わが佛《ほとけ》、
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