言うに及ばずながら、奥方はどうかすると、一白九紫を口にされる。同じ相性でも、始《はじめ》わるし、中程宜しからず、末|覚束《おぼつか》なしと云う縁なら、いくらか破談の方に頼みはあるが……衣食満ち満ち富貴……は弱った。
のみならず、子五人か、九人あるべしで、平家の一門、藤原一族、いよいよ天下に蔓《はびこ》らんずる根ざしが見えて容易でない。
すでに過日《いつか》も、現に今日の午後《ひるすぎ》にも、礼之進が推参に及んだ、というきっさきなり、何となく、この縁、纏まりそうで、一方ならず気に懸る。
ああ、先生には言われぬ事、奥方には遠慮をすべき事にしても、今しも原の前で、お妙さんを見懸けた時、声を懸けて呼び留めて、もし河野の話が出たら、私は厭《いや》、とおっしゃいよ、と一言いえば可かったものを。
大道で話をするのが可訝《おかし》ければ、その辺の西洋料理へ、と云っても構わず、鳥居の中には藪蕎麦《やぶそば》もある。さしむかいに云うではなし、円髷も附添った、その女中《おんな》とても、長年の、犬鷹朋輩の間柄、何の遠慮も仔細《しさい》も無かった。
お妙さんがまた、あの目で笑って、お小遣いはあるの?
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