持の看護婦が、
「薬は召上りましたか。瓶が落ちて破《わ》れておりましたが。」
と注意をしたのは言うまでもなかった。
で、新《あたらし》い瓶がもう来ていたが、この分は平気で服した。
その日|燈《あかり》の点《つ》くちと前に、早瀬は帯を緊直《しめなお》して、看護婦を呼んで、
「お世話になりました。お庇様《かげさま》でどうやら助りました。もう退院をしまして宜しいそうで、後の保養は、河野さんの皆さんがいらっしゃる、清水港の方へ来てしてはどうか、と云って下さいますから、参ろうかと思います。何にしても一旦塾の方へ引取りますが、種々《いろいろ》用がありますから、人を遣って、内の小使をお呼び下さい。それから、お呼立て申して済みませんが、少々お目に懸りたい事がございます。ちょっとこの室までお運びを願いたい、と河野さんに。……いや、院長さんじゃありません、母屋にいらっしゃる英臣さん。」
「はあ、大先生に……申し上げましょう。」
「どうぞ。ああ、もし、もし、」
と出掛けた白衣《びゃくえ》の、腰の肥《ふと》いのを呼留めて、
「御書見中ででもありましたら、御都合に因って、こちらから参りましても可《よ》う
前へ
次へ
全428ページ中398ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング