を隠した。窓の月は、キラリと笄《こうがい》の艶《つや》に光って、雪燈《ぼんぼり》は仄かに玉のごとき頸《うなじ》を照らした。
 これより前《さき》、看護婦の姿が欄干から消えて、早瀬の病室の扉《と》が堅く鎖《とざ》されると同時に、裏階子《うらはしご》の上へ、ふと顕《あらわ》れた一|人《にん》の婦《おんな》があって、堆《うずたか》い前髪にも隠れない、鋭い瞳は、屹《き》と長廊下を射るばかり。それが跫音《あしおと》を密《ひそ》めて来て、隣の空室《あきま》へ忍んだことを、断って置かねばならぬ。こは道子等の母親である。
 ――同一《おなじ》事が――同一事が……五晩六晩続いた。

       四十五

 妙なことが有るもので、夜ごとに、道子が早瀬の病室を出る時間の後れるほど、人こそ替れ、二人ずつの看護婦の、階子段の欄干を離れるのが遅くなった。
 どうせそこに待っていて、一所に二階を下りるのではない――要するに、遠くから、早瀬の室を窺う間が長くなったのである、と言いかえれば言うのである。
 で、今夜もまた、早瀬の病室の前で、道子に別れた二人の白衣《びゃくえ》が、多時《しばらく》宙にかかったようになって
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