げて、骨の蒼《あお》いのがくッきり[#「くッきり」に傍点]見える、病人の仰向けに寝た胸へ、手を当てて熟《じっ》としたが、
「奥さん、」
 と静《しずか》に呼ぶ。
 道子が、取ったばかりの手拭を、引摺《ひきず》るように膝にかけて、振《ふり》を繕う遑《いとま》もなく、押並んで跪《ひざまず》いた時、早瀬は退《すさ》って向き直って、
「線香なんぞ買って――それから、種々《いろいろ》要るものを。」
「へい、宜《よ》うがす。」
 ぼんやり戸口に立っていた小使は、その跣足《はだし》のまま飛んで出た。
 と見れば、貞造の死骸《なきがら》の、恩愛に曳《ひ》かれて動くのが、筵に響いて身に染みるように、道子の膝は打震いつつ、幽《かすか》に唱名の声が漏れる。
「よく御覧なさいましよ。貴女も見せてお上げなさいよ。ああ、暗くって、それでは顔が、」
 手洋燈を摺《ず》らして出したが、灯《あかり》が低く這って届かないので、裏が紺屋の物干の、破※[#「木+靈」、第3水準1−86−29]子《やぶれれんじ》の下に、汚れた飯櫃《めしびつ》があった、それへ載せて、早瀬が立って持出したのを、夫人が伸上るようにして、霑《うるみ》を
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