まんた》と云う攫徒《すり》である。
 はたと主税と面《おもて》を合わせて、
「兄哥《あにい》!」
「…………」
「不可《いけね》えぜ。」と仮色《こわいろ》のように云った。
「何だ――馬鹿、お連がある。」
「やあ、先生、大変だ。」
「どう、大変。」
 衝《つ》と入る。袂《たもと》に縋《すが》って、牲《にえ》の鳥の乱れ姿や、羽掻《はがい》を傷《いた》めた袖を悩んで、塒《ねぐら》のような戸を潜《くぐ》ると、跣足《はだし》で下りて、小使、カタリと後を鎖《さ》し、
「病人が冷くなったい。」
「ええ、」
「今駈出そうてえ処でさ。」
「医者か。」
「お医者は直ぐに呼んで来たがね、もう不可《いけね》えッて、今しがた帰ったんで。私《わっし》あ、ぼうとして坐っていましたが、何でもこりゃ先生に来て貰わなくちゃ、仕様がないと、今やっと気が附いて飛んで行こうと思った処で。」
「そんな法はない。死ぬなんて、」
 と飛び込むと、坐ると同時《いっしょ》で、ただ一室《ひとま》だからそこが褥《しとね》の、筵《むしろ》のような枕許へ膝を落して、覗込《のぞきこ》んだが、慌《あわただ》しく居直って、三布蒲団《みのぶとん》を持上
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