》村に居るんです。貞造と申して、以前御宅の馬丁《べっとう》をしたもので、……夫人《おくさん》、貴女の、実の……御父上《おとうさん》……」
三十三
「その……手紙を御覧なさいましたら、もうお疑はありますまい。それは貴女の御父上《おとうさん》、英臣《ひでおみ》さんが、御出征中、貴女の母様《おっかさん》が御宅の馬丁貞造と……」
早瀬はちょっと言《ことば》を切って……夫人がその時、わななきつつ持つ手を落して、膝の上に飜然《ひらり》と一葉、半紙に書いた女文字。その玉章《たまずさ》の中には、恐ろしい毒薬が塗籠《ぬりこ》んででもあったように、真蒼《まっさお》になって、白襟にあわれ口紅の色も薄れて、頤《おとがい》深く差入れた、俤《おもかげ》を屹《きっ》と視て、
「……などと云う言《ことば》だけも、貴女方のお耳へ入れられる筈《はず》のものじゃありません、けれども、差迫った場合ですから、繕って申上げる暇《いとま》もありません。
で、そのために貴女がおできなすったんで、まだお腹《はら》にいらっしゃる間には、貴女の母様《おっかさん》が水にもしようか、という考えから、土地に居ては、何かにつ
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