御入用なんでございますか。」
と胸へ、しなやかに手を当てたは、次第に依っては、直《すぐ》にも帯の間へ辷《すべ》って、懐紙《ふところがみ》の間から華奢《きゃしゃ》な(嚢物《ふくろもの》)の動作《こなし》である。道子はしばしば妹の口から風説《うわさ》されて、その暮向《くらしむき》を知っていた。
ト早瀬の声に力が入って、
「金子《かね》にも何にも、私《わたくし》が、自分の事ではありません。」
「まあ、失礼な事を云って、」
と襟を合わせて面《おもて》を染め、
「どうしましょう私は。では貴下の事ではございませんので。」
「ええ、勿論、救って頂きたい者は他《ほか》にあるんです。」
「どうぞ、あの、それは島山のに御相談下さいまし。私もまた出来ますことなら、蔭で――お手伝いいたしましょうけれど、河野(医学士)が、喧《やかま》しゅうございますから。」
……差俯向《さしうつむ》いて物寂しゅう、
「私が自分では、どうも計らい兼ねますの。それには不調法でもございますし……何も、妹の方が馴れておりますから。」
「いや、貴女でなくては不可《いか》んのです。ですから途方に暮れます。その者は、それにもう死にか
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