おつけ》を装《よそ》う白々《しろしろ》とした手を、感に堪えて見ていたが、
「玉手を労しますな、」
と一代の世辞を云って、嬉しそうに笑って、
「御馳走(とチュウと吸って)これは旨《うま》い。」
「人様のもので義理をして。ほほほ、お土産も持って参りません。」
その挨拶もせずに、理学士は箸《はし》もつけないで、ごッくごッく。
「非常においしいです。僕は味噌汁と云うものは、塩が辛くなきゃ湯を飲むような味の無いものだとばかり思うたです。今、貴女、干杓《ひしゃく》に二杯入れたですね。あれは汁を旨く喰わせる禁厭《まじない》ですかね。」
「はい、お禁厭でございます。」
と云った目のふちに、蕾《つぼみ》のような微笑《ほほえみ》を含んでいたから。
「は、は、は、串戯《じょうだん》でしょう。」
「菅子さんに聞いて御覧なさいまし。」
「そう云えば貴女、もうお出掛けなさらなければなりますまいで。」
「は、私はちっとも急ぎませんけれど、今日は名代《みょうだい》も兼ねておりますから、疾《はや》く参ってお手伝いをいたしませんと、また菅子さんに叱言《こごと》を言われると不可《いけ》ません――もうそれでは、若竹座へ
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