張出しの天幕《テント》を臨時の運動場にしつらえて、慈善市《バザア》を開く。謂《い》うまでもなく草深の妹は先陣承りの飛将軍。そこでこの会のほとんど参謀長とも謂《いつ》つべき本宅の大切な母親が、あいにく病気で、さしたる事ではないが、推《お》してそういう場所へ出て、気配り心扱いをするのは、甚だ予後のために宜《よろ》しからず、と医家だけに深く注意した処から、自分で進んだ次第ではなく、道子が出席することになった。――六月下旬の事なりけり。
朝涼《あさすず》の内に支度が出来て、そよそよと風が渡る、袖がひたひたと腕《かいな》に靡《なび》いて、引緊《ひきしま》った白の衣紋着《えもんつき》。車を彩る青葉の緑、鼈甲《べっこう》の中指《なかざし》に影が透く艶やかな円髷《まるまげ》で、誰にも似ない瓜核顔《うりざねがお》、気高く颯《さっ》と乗出した処は、きりりとして、しかも優しく、媚《なまめ》かず温柔《おっとり》して、河野一族第一の品。
嗜《たしなみ》も気風もこれであるから、院長の夫人よりも、大店向《おおだなむき》の御新姐《ごしんぞ》らしい。はたそれ途中一土手|田畝道《たんぼみち》へかかって、青田|越《ごし
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