仮名書の包みを開けて、元気よく発奮《はず》んだ調子で、
「おお、半襟を……姉さん、江戸紫の。」
「主税さんが好な色よ。」
と喜ばれたのを嬉しげに、はじめて膝を横にずらして、蒲団にお妙が袖をかけた。
「姉さん、」
と、お蔦は俯向《うつむ》いた小芳を起して、膝突合わせて居直ったが、頬を薄蒼う染《そむ》るまでその半襟を咽喉《のど》に当てて、頤《おとがい》深く熟《じっ》と圧《おさ》えた、浴衣に映る紫栄えて、血を吐く胸の美しさよ。
「私が死んだら、姉さん、経帷子《きょうかたびら》も何にも要らない、お嬢さんに頂いた、この半襟を掛けさしておくれよ、頼んだよ。」
と云う下から、桔梗《ききょう》を走る露に似て、玉か、はらはらと襟を走る。
「ええ、お前さん、そんな、まあ、拗《す》ねたような事をお言いでない。お嬢さんのお志、私、私なんざ、今頂いた御祝儀を資本《もとで》にして、銀行を建てるんです。そして借金を返してね、綺麗に芸者を止すんだよ。」
と串戯《じょうだん》らしく言いながら、果敢《はか》ないお蔦の姿につけ、情《なさけ》にもろく崩折《くずお》れつつ、お妙を中に面《おもて》を背けて、紛らす煙草の煙
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