枕に手を支《つ》き、むっくり起きると、あたかもその花環の下、襖の合せ目の処に、残燈《ありあけ》の隈《くま》かと見えて、薄紫に畳を染めて、例の菫《すみれ》色の手巾《ハンケチ》が、寂然《せきぜん》として落ちたのに心着いた。
 薫はさてはそれからと、見る見る、心ゆくばかりに思うと、萌黄《もえぎ》に敷いた畳の上に、一簇《ひとむれ》の菫が咲き競ったようになって、朦朧《もうろう》とした花環の中に、就中《なかんずく》輪《りん》の大きい、目に立つ花の花片が、ひらひらと動くや否や、立処《たちどころ》に羽にかわって、蝶々に化けて、瞳の黒い女の顔が、その同一《おなじ》処にちらちらする。
 早瀬は、甘い、香《かんば》しい、暖かな、とろりとした、春の野に横《よこた》わる心地で、枕を逆に、掻巻の上へ寝巻の腹ん這《ばい》になって、蒲団の裙に乗出しながら、頬杖《ほおづえ》を支いて、恍惚《うっとり》した状《さま》にその菫を見ている内、上にたたずむ蝶々と斉《ひと》しく、花の匂が懐しくなったと見える。
 やおら、手を伸して紫の影を引くと、手巾はそのまま手に取れた。……が菫には根が有って、襖の合せ目を離れない。
 不思
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