ていよいよ貴からんことこの酒のごとくならん、と誓ったそうだわね、と硝子杯《コップ》を火に翳《かざ》してその血汐《ちしお》のごとき紅《くれない》を眉に宿して、大した学者でしょう、などと夫人、得意であったが、お酌が柳橋のでなくっては、と云う機掛《きっかけ》から、エルテルは後日《ごにち》にして、まあ、題も(ハヤセ)と云うのを是非聞かして下さい、酒井さんの御意見で、お別れなすった事は、東京で兄にも聞きましたが、恋人はどうなさいました。厭だわ、聞かさなくっちゃ、と強いられた。
早瀬は悉《くわ》しく懺悔《ざんげ》するがごとく語ったが、都合上、ここでは要を摘んで置く。……
義理から別離《わかれ》話になると、お蔦は、しかし二度|芸者《つとめ》をする気は無いから、幸いめ[#「め」に傍点]組の惣助《そうすけ》の女房は、島田が名人の女髪結。柳橋は廻り場で、自分も結って貰って懇意だし、め[#「め」に傍点]組とはまたああいう中で、打明話が出来るから、いっそその弟子になって髪結で身を立てる。商売をひいてからは、いつも独りで束ねるが、銀杏返《いちょうがえ》しなら不自由はなし、雛妓《おしゃく》の桃割ぐらいは慰みに
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