と極《きま》ったが、何かまだ物足りない。
「帯ですか。」
「さよう、」
「これを上げましょう。」
とすっと立って、上緊《うわじめ》をずるりと手繰った、麻の葉絞の絹|縮《ちぢみ》。
「…………」
目を見合せ、
「可《い》いわ、」
とはたと畳に落して、
「私も一風呂入って来ましょう。今の内に。」
主税はあとで座敷を出て、縁側を、十畳の客室《きゃくま》の前から、玄関の横手あたりまで、行ったり来たり、やや跫音《あしおと》のするまで歩行《ある》いた。
婢《おさん》が来て、ぬいと立って、
「夫人《おくさま》が言いましけえ、お涼みなさりますなら雨戸を開けるでござります。」
「いや、宜《よろ》しい。」
「はいい。」と念入りに返事する。
「いつも何時頃にお休みだい。」
と親しげに問いかけながら、口不重宝な返事は待たずに、長火鉢の傍《わき》へ、つかつかと帰って、紙入の中をざっくりと掴んだ。
疾《はや》い事、もう紙に両個《ふたつ》。
「一個《ひとつ》は乳母《ばあや》さんに、お前さんから、夫人《おくさん》に云わんのだよ。」
十七
寝たのはかれこれ一時。
膳は片附いて、火
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